パーム油・アブラヤシについて
パーム油は、アブラヤシという植物から採れる植物油です。
あまり聞きなれない名前かもしれませんが、カップラーメンやスナック菓子、外食産業における揚げ油として広く使われています。また、チョコレートやカレーのルー、食品以外では洗剤などにも幅広く使われています。
アブラヤシは高温多湿の熱帯地域で育つ植物で、現在は世界の9割近い生産量をインドネシア・マレーシアの2か国が占めています。
また、アブラヤシは季節を問わず収穫ができ他の植物油(大豆油、なたね油等)と比べて単位面積当たりの収穫量が多いため、生産効率が良いという特徴があります。世界人口の増加に伴い重要も増加しており、それに応える形で生産を拡大してきました。
アブラヤシ農園における問題
生産量を増やすには大きく2つの方法があります。
1つは農園自体の面積を増やすこと。もう一つは単位面積当たりの生産量(生産効率)を向上させることです。
これまでは主に前者の方法を取り、アブラヤシを植えるために元々あった熱帯雨林を伐採し、農園面積を拡大してきました。例えばインドネシアのスマトラ島では30年間で森林の面積が半分以下になったとの報告もあります。(WWF-世界自然保護基金ウェブサイト)
他にも森林を伐採した後の整地のために火入れを行うことで隣国まで煙の被害が出たり(煙害)、農園拡大に作業者の数が追いついておらず、子供や他国からの出稼ぎ労働者が過酷な環境で働いているという問題があります。
この現実を鑑みると、これ以上農園面積を増やして供給量を増やすことは持続可能性があるとはいえません。
農園の生産効率向上にむけて
農園の生産効率向上を妨げる要因はいくつかありますが、その一つにアブラヤシが感染する病害の影響があります。
ガノデルマ(アブラヤシへ被害を与える種は主にボニネンス、学名:Ganoderma boninense) はガノデルマ属糸状菌の総称で、感染すると木の水分伝達機能が阻害され収穫量が減少し、最終的には枯死します。現時点では感染した木を治癒させる有効な方法はなく、感染した木を早期に発見し伐採することで周囲の木への感染を防ぐことが対策となります。しかしながら感染初期は人間の目では判断が難しく、容易に判断できる段階ではすでに周囲の木へ感染が拡大してしまっています。
我々の有するスペクトル計測技術を使うことで、人間の目には見えない特徴を捉えることが出来ます。アブラヤシ農園の上空にドローンを飛ばし、アブラヤシの木(葉)のスペクトルを計測します。
計測されたスペクトルデータに画像処理を行った後に機械学習させることで、木が健康か否かを判定するAIアルゴリズムを構築します。早期に病気の木を発見することで、被害の拡大を防ぎ生産効率の向上に貢献します。
また、現状多くの農園ではスタッフが実際に農園を歩いて木の感染状況を目視確認しています。大規模農園は数万~数十万ヘクタールの規模になるため、スタッフの人件費負担やスタッフの判定精度にも課題があり、スペクトルを用いた木の健康状態判定はそれらの課題の解決にも貢献します。